0003 100歳まで生きていたい?
さて、そこで考えるのは、いったい自分は、百歳になるその時まで、どうやって美しく生き、どうやって日々を過ごして暮らせるのだろうかという疑問です。
人間は例外なく死ぬということは、もちろん誰しもわかっています。終焉(しゆうえん = 命がが終わること、死を迎えること)のその最後の日まで、心身共に健康で、他人に迷惑をかけることも無く、それも思いきり面白く、楽しく、幸せに暮らしてゆけるのだろうか? という素朴な疑問には、簡単に答えが出せません。
この世に生きるかぎり、経済面での不安、仕事の失敗、失業、詐欺、喧嘩、交通事故、家族間の不和、先輩後輩友人たちとの離別、孤独化などは続きます。いやいやそうした人間社会のトラブルだけではありません。地球温暖化にともなう巨大地震、津波、台風、火山爆発、放射能汚染との遭遇で、いつ生活環境の激変があるかも知れない近未来です。
わたしは過去十数年にわたって、個人的にこうした不安を持ちつづけてきました。
じつは昨年、高校時代の集まりがあったので、昔の同級生達にためしにこんな質問 をしてみたのです。
「あなたは100歳まで生きていたいと思う?」
すると、かなり多く仲間が、
〝うーん、百歳か。長生きも悪くないとは思うが、でも到底そこまで生きていける自 信はない〟という内容の返事をしてくれました。この人生100年時代の到来をネガティブ面からとらえてこんな考え方をしている人がかなりいました。
「無理な治療や介護が必要となるような病院生活はゴメンだよ」「長生きしてみても生活費や医療費に余裕がない」「心身共に健康でいられる自信まったく無し」「年金の範囲内で平凡に生きてピンピンコロリで死にたいが、かなり厳しい」などなど。
たしかに今の時代、明日のことを考えれば、高齢者が生きてゆく上の心配のタネはきりがありません。これまでの人生で味わってきた以上の悩みや苦労が、これから先もわが身に降りかかって来るのでないだろうか、という不安を抱えていても、それはごく平均的なこと。
昔、わたしの演劇仲間だったひとりの女性が、
「少なくとも認知症になったり、老化して寝たきりになったりのそんな状況で人生の最後を迎えたくはないわ」と呟いていたのが印象的でした。彼女はゴーリキーの『どん底』で美貌のヒロインを演じたものでしたが・・・